ヴァナにおける私にとっての第二の故郷、バストゥーク。
ファーストキャラを封印し、あらためて冒険者として踏み出す地として選んだのはバスでした。
水と緑のあふれる美しいウィンダスとは打って変わって、岩肌や荒れ地ばかりの広がる緑の乏しい鉱山国。なぜバスを選んだのか、といえば、ファーストキャラで出会い私のヴァナライフに多大なる影響を及ぼしたとある冒険者が、この国の出身だったからです。
さらには転生にあたって新たに選んだアバターも、その冒険者と同じ。
「純粋にヴァナを冒険するためには、リアル性別情報はノイズになる」と、ファーストキャラの顛末を通じて学び、次は男性キャラにすると決めてはいたものの、アバターに所属国まで真似をするというのは、どんだけその冒険者のことが好きだったんだ自分と、ちょっと気恥ずかしいやら感心するやらです。
今にして思えば、彼のプレイヤーとしての在り方、冒険者としての在り方に強く憧れていた私は、彼のような冒険者になりたかったのでしょう。
結果的に、エルヴァーン男子というのは「カッコイイところはカッコイイけどダメなところはとことんダメ」という、今で言う残念なイケメンにあたる部分が多く、またリアル男性としても振る舞いやすかったことから、このアバターをヴァナにおける分身に選んで正解でした。長く過ごすうちに、このアバターも、かつて憧れた冒険者の姿ではなく「自分自身の分身」として、すっかり馴染んでいきました。
新たにエル男子としてバスの地に降り立った私は、どこかで書いた気がしますが、赤魔道士をジョブに選んでグスタベルグに飛び出しました。
この頃はまだまだ新米冒険者が多く、レベリングも非常に困難で、選んだひとつのジョブをメインジョブとして育てることが当たり前だった時代。そんな時代においてはファーストジョブの選択も重要でした。
私が赤魔道士を選んだ理由としては、「ソロが強い、魔法も剣もそこそこに扱える、赤魔道士専用魔法があらゆる場面において有用、レベルが上がればPTプレイでも人気」といったところでしょうか。あとは何より「AFの赤い羽根帽子がカッコいい」でした。
レベルが上がらなければ何もできない、高レベルになってもPTでなければ出来ないことばかりのシビアなこの世界で、PTプレイを睨んだジョブ選択をするのは、ごくごく当然のことでもありました。
実装直後の赤魔道士はいわゆるポンコツジョブでしたが、その後あらゆるテコ入れが為され、この頃には最強ジョブのひとつとして数えられていました。とはいえジョブとしてはおいしいところばかりの赤魔道士をやっていくのは、同時にそう簡単なことではありませんでした。
その理由のひとつは、Lv70限界突破クエスト「星の輝きを手に」通称マート戦が、全ジョブ中最難関だったこと。これについてはいつか語るとして、ここではもうひとつの理由について。
それはLv41で習得できる赤魔道士の代名詞とも言える必須魔法「リフレシュ」が、当時は大変高額で、旅慣れた冒険者ですらそうそう手に入れられるものではなかったことです。
ちなみにリフレシュと並んで「必須だけれど高額」だった魔法に、白魔道士専用魔法「イレース」や「レイズ2」などがあります。特にサポレベルでも覚えられ唯一無二の性能であるイレースは、ある無しで狩れる獲物が左右される魔法のひとつだったため、赤魔道士メインの私も無関係ではありませんでした。
赤魔道士は「白魔法と黒魔法の双方を覚えられる」ゆえに、魔法習得にとにかくお金がかかりました。覚えられる魔法はすべて覚えていくことを信条としていた私は、常に金策をしながらプレイすることが当たり前になっていき、この頃からバスに程近い「パルブロ鉱山」で炭鉱夫をすることが日課になっていました。
低レベル帯の赤魔道士はとくに強く、しかも私は魔法は微妙だけれど腕力は強い種族であるエルヴァーンでしたから、グスタベルグから近隣のダンジョンをソロで駆け回り、さして苦労することもなく順調にレベルを上げていきました。セカンドキャラであったことから、ヴァナライフにおけるあらゆるノウハウを最初から習得していたことも大きいと思います。
ファーストキャラではウィン所属だったので、バス近郊を歩くことも新鮮でした。
バスの街中から直接行けるダンジョンに「ツェールン鉱山」があり、その先にはジラート以降解放されるミミズ狩りが美味しいことで知られる「コロロカの洞門」があります。
バスから門を出ると、南北に「グスタベルグ」と呼ばれる荒野が広がっています。
北グスタベルグからは「パルブロ鉱山」に行くことができ、ここはバス近郊で低レベル帯がレベリングや金策をする上で重要な場所となっていました。
南グスタベルグから続くダンジョンに「ダングルフの涸れ谷」があり、さらにここを抜けると北グスタベルグにある大滝の麓に出ることが出来ました。この大滝の下は滅多に人が来ることもなく、知る人ぞ知るちょっとした穴場スポットになっていました。
北グスタベルグからは、もう一箇所「コンシュタット高地」へと向かうこともできました。荒々しい岩場や乾いた荒野ばかりの広がるバス周辺とはうってかわり、コンシュタットには深い色の美しい草原が広がっていました。いくつもの風車や、岩肌剥き出しの山が点在するコンシュタットを吹き抜ける風は、少しひんやりとするような錯覚を覚えたものです。
コンシュタットは冒険者たちからは「コンシュ」と略されていました。ここは「バスの玄関口」でもあり、バスから出て行く者も、バスを訪れる者も、必ず通る場所でもありました。またコンシュには、テレポ岩こと「デムの岩」があり、テレポを習得している冒険者なら各地からここへ一瞬でワープしてくることもできました。
三国周辺のエリア構成は、各地の風土や個性を濃厚に引き立たせるフィールドデザインとなっており、同時にとてもよく出来た配置がなされていました。
バストゥーク、ウィンダス、サンドリアの三国とも、まず街と隣接する初歩的なフィールドがあり、その周辺にレベルの違ういくつかのダンジョンがある。さらにその先に「玄関口」に当たるエリアがあり、ここにはデムのような「テレポ岩」が配置されている。
そこを抜けると海の見えるエリアがあり、そのエリアには定期船の巡航する港町がある。この定期船は、ウィンダス方面とバス・サンドとを繋いでいました。
ちなみにバスとサンドは完全な陸路のみで行き来できましたが、ウィンにだけは海を渡る必要があったため、今のようなお手軽ワープの無い当時は、ウィンだけはなんとなく「隔てられた遠い国」という印象がありました。
ウィンダスからスタートしたファーストキャラは、ウィン周辺のフィールドを駆け回って育ちました。それと同じように、新たに転生した【首】ことエルヴァーンの私は、所属国バス周辺のフィールドを駆け回って育っていきました。
低レベル帯はまだ比較的ソロでも戦いやすいとはいえ、今よりもずっとレベルの上がるスピードは遅く、必然的に私は、グスタベルグやツェールン鉱山、パルブロ鉱山、涸れ谷、コンシュタットという周辺エリアで多くの時間を過ごすことになりました。
涸れ谷は少し遠くてアクセスが悪く、鉱山より金策ポイントが少なかったせいもあって他ダンジョンに比べればあまり足を運びませんでしたが、それでもあの文字通り涸れたように乾いた景色、硫黄の臭いが常に漂い、いたるところからガスや間欠泉が吹き出ている景色を、はっきり思い出すことができます。あの場所もまた、いかにもバスらしいエリアでした。
コンシュタットの東の外れに入り口のあるグスゲン鉱山は、炭鉱夫で金策をしていた頃に最もお世話になった場所です。
グスゲン鉱山から掘れる鉱石類は高値で売れるため、一時期はレベリングもせずに、ずーーーーーーーっとここに籠もっていました。この頃プレイしており、高額魔法や高額装備等の為に金策が必要で、なおかつNM狩りやらで金策することが難しかった人なら、「グスゲン鉱山に籠もって炭鉱夫をしていた」はあるあるではないかと思います。
他にもグスゲンは、ちょっとしたホラースポットでもありました。うち捨てられ静まり返った暗く陰鬱な光景の中を、骸骨系モンスター等が徘徊しているだけでもかなり不気味なのですが、ここにはとくにプレイヤーに関与してくるわけでもない無数の幽霊達がいました。彼らは同じ場所をひたすら移動し続けていたり、物陰にずっとしゃがみこんでいたり、天井から逆さにぶら下がっていたりと様々で、不意に遭遇するとなかなかドキッとさせられたものです。
今回の記事に使うスクショを撮影中に通りがかった、南グスタの「Leaping Lizzy」がわく一帯。今はもうリーピングブーツは必要無いにもかかわらず、このあたりを通ると、ついその名前を探してしまいます。
昔ここを歩いていたら目の前を「Leaping Lizzy」がうろうろしていて、誰も狩りにこないので殴ったらリーピングブーツがドロップしたという出来事がありました。
当時は「皇帝羽虫の髪飾り」「クジャクの護符」「リーピングブーツ」といえば、いずれも高額かつ前衛垂涎の三種の神器でした。偶然手に入れることができたそれを、私は売らずに長いこと愛用していました。そのときのリーピンは、今はセカンドキャラの猫がレべリング時に装備しています。